ロ・スティヴァーレについて
コンチェリア(革なめし工場)が立ち並ぶ、イタリアを代表する革の街サンタクローチェ・スッラルノ。その一角にロ・スティバーレはあります。1958年の創業以来からずっと、植物タンニンのみを用いて自然な革をなめしているこの工場は、長年培われた技術と近代的な設備により、非常に高品質なバケッタレザーを生み出しています。伝統製法を重んじながらも、新しい風合いの革を生み出せる柔軟な社風が特徴で、より素晴らしい革を求めて日々研究を重ねています。
原皮がなめされ一枚の革となるまで、大変長い時間を必要とします。昔ながらの製法を守り、高品質な革づくりを基本としているコンチェリアでは、染色や加脂、そして乾燥など、短縮することのできない工程が存在するため更に多くの時間をかけてなめされています。そんな手間暇を惜しまずに作られた革だからこそ、エイジングが非常に美しく、ずっと大切にしたくなるような深い味わいを出すことが可能になります。ロ・スティヴァーレでも一枚の革を送り出すまで、まるで自分の子供のように優しく、そして時に厳しい愛情をかけています。
この写真はなめしの際用いられるタンニンの粉末状のものです。現代で最も多く流通している革はクロムなめしの革で、使用用途によってその長所も様々ですが、ロ・スティヴァーレでは、タンニン100%でしかなめしを行っていません。その理由は、革本来の持ち味を生かすことと、エイジングの美しさを求めているからです。エイジングは革の中のオイルやタンニンが酸化し、濃色へと化学変化することで起こりますが、このエイジングの速度が非常に大きく、そして美しく変化するのがタンニン100%の革の特徴です。
革にとってもうひとつ重要なのが、なめしの際に投入されるオイルです。このオイルの分量でも革の風合いが変化します。潤沢にオイルを含ませた革は乾燥しにくく、時間が経ってもひび割れを起こしにくいため、製品のケアが比較的簡単なことが特徴です。また、しっとりした手触りや優しい光沢を持たせるなど、多くのメリットを生むことができます。先述の通りエイジングの面でも欠かせない存在で、オイルが多いほどエイジングは速く、そして深くなっていきます。オイルは革に浸透するまで大変時間がかかりますが、惜しみなくオイルと時間を革に投入することで、イタリアらしい上質なオイルドレザーが出来上がっていきます。
ロ・スティヴァーレのオフィスには数えきれないほどの革サンプルがありますが、それらは今までにない革を生み出してこようとした努力の結晶です。伝統製法で鞣される革は、色ムラやシボ感など一枚ずつ表情が異なりますが、革の個性を愛するイタリアの文化を丸ごと堪能することができます。伝統的なバケッタレザーを作る基本工程に加え、ウォッシュ加工を施した個性的なオイルドレザー「アルトアッシュガート」や、今までにない極上の品質を求めて生まれた「トラモント」など、伝統を重んじながらも新しい時代へのチャレンジを常に続けています。
素材作りや色使いに優れるイタリアのコンチェリアにおいても、非常に多くの試験を繰り返し、ようやく日の目を見ることができた一部の上質な革を、緻密な作業を得意とする日本の熟練職人の手により丁寧に縫製していきます。海を越えて出会うそれぞれの職人たちの技術と、込められた情熱により完成した商品は、他にはない圧倒的な存在感を放ちます。上質な革製品はずっと使い続けることができるため、長い時間を共にし、色合いを深めていくたびに、手放すことのできない宝物のような存在となっていきます。そんな宝物の原石となる上質な革製品を、これからもお届けしていきます。