ラ・ペルラ・アッズーラについて
「イタリアに眠る上質な革を探す旅路へ」というコンセプトの基、普段目にすることのないマニアックな革を求める中、たどり着いた一枚の革。それは、世界中の革を扱ってきた熟練職人でさえ驚く質感を持っていました。トスカーナ州にあるタンナー、ラ・ペルラ・アッズーラ社によって鞣された、エクストラ・プルアップという希少革。トスカーナ伝統のベジタブルタンニン鞣しを基盤にしながら、その工程において様々な特殊加工を施されており、他の革とはまったく異なる個性を持っています。今までに見たことのないような質感を楽しむことのできる、アヤメアンティーコの最上級シリーズです。
数多くのタンナーが集まる革の街、トスカーナ州サンタクローチェ・スッラルノ。その一角に、ラ・ペルラ・アッズーラ社はあります。気さくな革鞣し職人の集まるこのタンナーは、オープンな社風ながらその技術は超一流。アンティークなベジタブルタンニン鞣しのバケッタレザーを主に扱い、伝統を重んじながらも新しい技術を取り入れ、革新的な革を作り上げることにも重点を置いています。この動画では、ラ・ペルラ・アッズーラ社協力のもと、通常では見ることの難しいタンナー内部の詳細や、イタリアンレザーが出来上がるまでの鞣し工程をご紹介しています。
エクストラ・プルアップという革の名前の元ともなっている、プルアップという革用語ですが、オイルがたっぷりと含有されている、オイルドレザーに起こる現象です。革を引っ張る(pull/プル)ことで内部の染料がオイルとともに移動し、下地の色が現れる(up/アップ)こととされています。鞣しの工程でさらにロウワックスを足すことで、劇的なプルアップ効果を生んでいるのが、エクストラ・プルアップです。この革の特徴として、エイジングが非常に美しいことや、保湿成分に富んでいるため、日々のケアを特に必要としないこと、また、プルアップ効果を利用し、小傷をすぐに隠せてしまうという利点があります。
エクストラ・プルアップは、牛革の中で最も強度の高い、ショルダー(肩部分)を使用しています。ショルダーの特徴は、トラと呼ばれる天然のシワ模様を持っていることです。このトラは、堅牢なショルダーを用いて、ベジタブルタンニン鞣しを行い、革の上から余分な色付けをせず、革の中から染め上げるという、最高の鞣し方をされた上質なバケッタレザーが持つ勲章のような模様ですが、エクストラ・プルアップは、このトラが非常に強く出ていることが特徴です。このトラをどう製品に組み込んでいけるかが、一流職人の腕の見せどころです。
エクストラ・プルアップが他の革と異なる点として、その香りも挙げられます。写真でお伝えできないのが残念ですが、ただの革の香りではありません。鞣しの工程において、特別なフレグランスを革の繊維にまで浸透させることで、革自体から香水のような香りが漂います。最高の香りとなるまでいくつもの試作を重ねており、詳しいレシピは企業秘密ですが、その一部としてバニラエッセンスが使用されています。日々使用することでその香りは徐々に薄らいでしまいますが、イタリアのタンナー特有の遊び心を楽しむことができます。
エクストラ・プルアップは超個性を持つ革であるがため、革製品にするという点から見た場合、扱いが極端に難しいという特徴も併せ持っていました。強く触った箇所の色が変化するという性質を持っているため、製造には細心の注意を払う必要があり、分担作業では美しく仕立てることができません。ひとりの卓越した技術を持つ名匠が、裁断から縫製、仕上げに至るまですべてを一貫して行うことで、ようやく一本が完成します。他の熟練職人が驚いてしまうほどの完成度を誇る、美術品レベルの作品のため、少量しか生産することのできない、本物の限定品です。
見えない箇所にまで贅沢を詰め込んだ、最高品質のエクストラ・プルアップシリーズ。小銭入れの中はもちろん、隠しポケットやカード段の裏側にまで、上質なヌメ革を使用した、本当の意味での「総革仕様」です。金具はすべて信頼の日本製。濡れているかのように極限まで磨かれた金具は、金具職人の情熱が宿り、金属なのにどこか温かみを感じるほど。シリーズのひとつとして展開している靴ベラには、真鍮プレートを間に挟み込むなど、他では見られない特別仕様。まさに「本当に良いもの」を求めているからこそ実現したシリーズです。これらすべてがこの上ない贅沢を携えた、夢のようなハイエンドモデルです。