カルロ・バダラッシについて
イタリアでは革なめし工場のことをコンチェリアと呼びます。そのコンチェリアが密集している街、サンタクローチェ・スッラルノ。バダラッシ社はここで世界的に有名なミネルバシリーズを初めとした、伝統的なバケッタレザーを生み出しています。バケッタレザーは大変自然な風合いを持っていますが、自然で素朴な革ほど、数多くの鞣し工程を経ています。
伝統のバケッタレザーと聞くと古風なイメージを持ちますが、現在では非常に近代的な設備で鞣されています。このドラムでは、原皮を水洗いしたり、植物タンニンを入れて防腐処理を施し、皮から革へと変化させます。また、革にオイルを入れたり、染色するためにも用いられます。伝統のバケッタレザーのレシピを近代的な設備に投入する、時代の流れを感じられる場所でもあります。
バダラッシ社の特徴で挙げられるのがこちらのオイルです。多くのコンチェリアで一般的に用いられる、魚や植物などの液体オイルではなく、牛脚の固形オイルです。乳白色で少し柔らかく、香りが少ないことが特徴です。植物タンニンでなめされた革はバケッタレザーと総称されますが、このオイルで加脂を行い、オイルたっぷりのバケッタレザーを作ることがバダラッシ社最大の特徴です。浸透しにくい固形オイルをじっくりと時間をかけて加脂することで、オイルが抜けにくく手触りのしっとりした革を作ることができます。
染色や加脂、乾燥など非常に多くの工程を経て、ミネルバボックスやミネルバリスシオが生まれます。なめし工程の後は、革で不要となる縁の周りをカットする、トリミングなどの仕上げ工程を行います。検品も一枚ずつ行うため、一枚の革をつくるのにおよそ一ヶ月以上かかります。高い品質管理のもと、昔ながらの製法でじっくりと時間をかけてつくられたバケッタレザーは、手触りも香りも自然です。天然の革のため一枚ずつ個性があり、トラと呼ばれるシワや小傷もありますが、それがかえって味になるのもバケッタレザーの特徴です。
こちらのミネルバボックスのような革は、バダラッシ社でも非常に古いバケッタレザーです。経年によるシミなどはありますが、今でも非常に強いコシを持っており、商品として十分加工できるほどの耐久性があります。このように、バケッタレザーは時代を超えてもその魅力が変わらないという性質を持っています。
イタリアで伝統的に受け継がれるバケッタレザーを、日本で60年以上革製品だけを作り続けている工房で、丁寧に縫製しています。天然の皮革のため、ひとつひとつの製品すべてに個性があります。シボと呼ばれる革のシワが強いもの、逆に表面がスムースなものもあります。また、色合いも革の部位によって少しずつ異なりますが、これがバケッタレザーの特徴で味になる部分です。こうした自然の革製品は、出来上がったときが100%の完成ではありません。日々使用しながら色合いを深め、光沢を増すようになってからが革製品の本領発揮です。そのためにも、ずっと使い続けられる、最高品質の製品をお届けします。